「ボローニャの夕暮れ」芸術の超大国であるイタリアは、映画においても
ときおり、凄みのある作品を生み出してくる。
人生における苦しみや悲しみ、そして喜び。
人の残忍で無慈悲な心と無償の愛。
掴みどころのない人の心を人間味溢れるドラマの中に
巧みに散らし、織り込んでゆく“映画心”はこの国の伝統。
ロッセリーニ、フェリーニ、タヴィアーニ兄弟、モレッティ、
デ・シーカ、トルナトーレ、アントニオーニ、ベルトルッチ・・・
繊細ではフランスには及ばないかもしれないが、
こと人の心の不可思議さを描かせれば、
この大国の右に出る国はないのではないだろうか。
主人公演じるシルヴィオ・オルランドのように、
決して美男ではないが、比類なき名優たちも
この“美”の大国は多数輩出しているのである。(T)
渋谷ユーロスペース、銀座シネパトスにて上映中
「ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実」
「ウィンター・ソルジャー ベトナム帰還兵の告白」べトナム戦争が勃発してから50年になる本年、
同戦争を題材にした傑作ドキュメンタリーが公開される。
「ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実」と
「ウィンター・ソルジャー ベトナム帰還兵の告白」の2作品である。
両作品はそれぞれ米アカデミー賞最優秀ドキュメンタリー映画賞、そして
ベルリン国際映画祭フォーラム部門でインターフィルム賞を受賞している。
朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争と、はっきりと“戦争”と呼ばれる
武力行使のみならず、これまでに世界各国で引き起こされる“紛争”に
様々なかたちで関与、介入してきた米国。
2作品を通じて観れば、そこには歴史的観点からの当時のアメリカ、
さらには現在にいたる歴史的流れとしてのアメリカ、そうした
過去と現在を結びつける大きな視点を得ることができる。
歴史に、こうした戦争を刻んでしまうアメリカの負と、
同時にこのような映画を世に問うアメリカの正、
その2面を強く感ぜずにはいられない。(T)
東京都写真美術館ホールにて上映中
「ソウルパワー」話題作、超大作と見なされ興行収入でもトップ10入り
するような作品を観てみるとどれこれも映画の内容としては
似たり寄ったりで、起承転結、構成、語り口には大差がなく、
そこには映像表現の違いくらいしか新たな発見は感じられない。
しかも最近は、その映像表現の部分がいま話題の3Dも含めて
映画の“売り”になっており(もしくはそれしか“売り”がない?)
目を凝らして作品の本質を見つめると、そこにはかつての作品の
焼き直しばかりが透けて見えてくるのである。
そうした傾向への反動だろうか、今ドキュメンタリー映画が
とても元気があり活況であり、実際上映本数も確実に増え続けている。
実際に映画館に行って新作のチラシをチェックしてみると
その本数の多さに驚くばかりである。
上映中止が問題になっている「ザ・コーヴ」をはじめ、
10年前なら信じられないくらい多種多様なドキュメンタリー映画
をわたしたちは観ることができるのだ。
マンネリ化した内容空疎な作品よりも、嘘ではない真実の重さ、
そして緊張感といったリアリティを、人々は欲しているのだろうか。
ある1時代、歴史の一こまを見つめなおし、改めて“今”を考えてみる。
この不確実な世の中に、今とはどういう時代なのか、過去はどのような
時代であったのか、その位置や流れを見つめ直す試みが起きている。
この「ソウルパワー」もそんな流れの中に位置する1本。
“本物”を求め、“真実”を追求しようという流れは時代の必然である。(T)