「男と女」以前所属していた製作会社に一台の35㎜カメラがあった。
映画のカメラだといわれなければいったい何の道具なのかわからないような
おそろしく不恰好なカメラで、しかも相当の年代物であった。
そのカメラはフランス製で、名前はカメフレックスCM3といった。
何度か実際の撮影現場で使用したことがあるが、
ガラガラと激しい音をたててカメラが回り、同時録音などは到底無理。
他に35ミリカメラがなかったので、仕方なく使っていたのであった。
この「男と女」のDVDにはメイキング映像が収録されている。
そして、そこにはこのカメフレックスが登場するのだ。
しかも、監督のルルーシュ自身がカメフレックスを回しているのである。
サーキットを走るフォードGT(だったと記憶しているが・・・)。
その前方をゆく撮影車の後部でカメラを担いでいるルルーシュ。
その姿を観ていて、なぜか目頭が熱くなってきたことを憶えている。
それは、カメフレックスに感動したわけではなかった。
この映画は少人数のスタッフで、
そしておそらく低予算で撮られた作品であることは
その現場の映像からも見てとることが出来た。
地を這うようにゆくフォードGTを捉えようと、
懸命にカメラを回しているルルーシュ。
映画はこうやって作るんだ!
ルルーシュの姿から、まさにそんな言葉が聞こえてくるようだった。
そこには若きルルーシュの、命がけの情熱があった。
この映画1966年のカンヌ映画祭のグランプリ受賞作である。
当時、この映画を観た人たちは、さぞかしびっくりしたことだろう。
今でこそ、このようなスタイルの作品はわりと普通に撮られているが、
当時はそれまでにない斬新な印象を受けたことだろうと思う。
そのインパクトの大きさは、ウォン・カーウァイの「恋する惑星」など
比ではなかったと思う。
こんなにも洒落ていて、大人の雰囲気がある作品も珍しいのではないだろうか。
しかも、ルルーシュは当時29歳である。
恐るべき早熟ぶりである。
ラストシーンは、その若きルルーシュの情熱に免じてご勘弁をという感じである。
それにしても、自分は29歳のとき、いったい何をしていたんだろう・・・(T)
男と女 特別版 / ワーナー・ホーム・ビデオ
ISBN : B00008CPCQ
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