「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」子どもの頃からコミック・ヒーローものが大好きであった。
最初の記憶は「仮面の忍者 赤影」だったと思う。
洋の東西を問わず、その手のテレビ番組は片っ端から見ていた、
そんな風に記憶している。
そうした“刷り込み”行為が効いているのか、
近年立て続けに映画化されているアメリカン・コミックの
実写版映画も大抵の作品は観てしまっているのだ。
ただし、そうした作品の大抵は、過剰なまでの映像表現、
あまりにもそのことに力点をおきすぎ
「どうだ?すごいだろ、こんな映像これまで見たことないだろ!」
全編そうした製作者側の幼稚なアピールが溢れているように思え、
もう行き着くところまで行ってしまった、そんな感すらするのである。
そうした中、ひときわ異彩を放っているのがデル・トロ監督の
「ヘルボーイ」だと思う。
とにかく、この手の作品で最も重要事項となる
キャラクターのたて方、そしてストーリーの構造に至るまで、
この作品は独特の感性に満ち溢れているのである。
前作を観たときに気がついたのは、
この監督の民俗学、そして歴史に通じた知性の閃きがこの作品に、
唯一無二の個性を与えているということであった。
魔物が蠢く世界を描いているのにその表現は知的かつユーモラス、
そして全編には大らかな空気さえ漂っている。
さらに今回、パンフレットに寄せた監督自身のコメントの中に
「オズの魔法使い」という名作の名を発見するにつけ
この監督の映画におけるルーツとでもいえばよいのか、
彼のスタンスをはっきりと知った、そんな気がしたのであった。
「パンズ・ラビリンス」も同様、
デル・トロ監督の手によって生みだされた作品は
爽快さや過激な演出を意図したいわゆる“ヒーローもの”とは
一線も二線も隔した、強いて言えば寓話や民話、
さらには、神話の世界観にも近い、そんな作品なのだと思う。
彼が目指しているのは、単純な刺激のみを与え、
まるで使い捨てにされるような、いわゆる安直な映画ではない。
それは、普遍的で永続性のある“おとぎ話”なのではないか、
そう思うのである。
今回の作品を貫く思想は、監督自身の言葉を借りれば
“足るを知る”ということである。
現在、世界が直面している様々な問題、その根っこには
わたしたち人間の、過剰なまでの欲望が関連していることは明らか。
デル・トロは、“人間の強欲こそが真の恐怖”とも語っている。
世界で日々起きている現実に目を向け、さらにしっかりと未来を見据える、
そういった世界観の土台の上に、現代の「オズの魔法使い」のような
最上のおとぎ話に織り込んだデル・トロ監督。
その今後から、一層目が離せなくなってきた。
さらに嬉しいことに、彼は10年先まで製作予定が入っているというから、
当面楽しみは尽きそうにない。(T)
「ヘルボーイ」というわけで、未見だったトロ監督の「ヘルボーイ」を観た。
「クロノス」「ミミック」「デビルス・バックボーン」と、
これまでの彼の作品は、彼の歴史観や宗教観、
そしてメキシコ人であることの文化的背景が
にじみ出すぎてしまっているような、
どこかエンタティンメントに徹せられない
不完全燃焼のようなもどかしさがあった。
そんな彼が、一見知性と教養をかなぐり捨てた風を装って、
お遊び感覚全開で撮りあげたのが本作品。
彼は脚本まで書いていて、小技も効かせながらかなり楽しんでいる様子。
でも本質的にはハードボイルド映画。
そこいらのアメコミものとはレベルの差が歴然。
「パンズ・ラビリンス」、早く観たいぞ!(T)
ヘルボーイ / ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
ISBN : B000SNUH2K
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