「続・荒野の用心棒」この映画のことはよく憶えている。
この映画を観たのは、今から35年前のこと。
箱根のある家に数家族が集っていた。
記憶に間違いがなければ、それは春休みの雨模様の一日の昼下がり。
皆が居間でのんびりと雑談をしていたときに、
誰かがこの映画を観たくてテレビのスイッチを入れたのだと思う。
当時すでに、映画に魅せられていた自分も、
大人たちに混じって画面を食い入るように見つめていのだと思う。
映画が終わったときには、居間の雰囲気は重苦しく、
すっかり静まり返ったものとなっていた・・・というのは大げさ過ぎたとしても、
誰だったかが、「残酷だねぇ・・・これだからマカロニ・ウェスタンは嫌いなんだ・・・」
とつぶやいていたのをはっきりと憶えている。
たしかに、そこに観た西部劇は、それまで自分が知っていた西部劇とは
おそろしく異なるものであった。
西部劇に限らず、あらゆる映画ともかけ離れたものであった。
そして、自分の映画観、ひいては人生観までもがこの映画によって
激変したといっても過言ではなかった。
ウェットでダーティーな、西部劇的な明るさなど皆無の、
まさに泥まみれのドラマである。
鮮明に記憶しているのは、ラスト数分間の
墓地のシーン。そこには、大人だけに許されるような、緊張感が存在していた。
あの煽りの構図、今もこの映画の象徴としてしっかりと心に刻まれている。
主題歌の
“ジャンゴ~♪”と歌い上げるメロディーも、
おそらく棺桶(!)に入るまで、いや、棺桶の中までついてくるだろう。
それにしても残酷な映画である。
世の中、厳しいんだぞ
生きていくって、大変なんだぞ
子ども心にも、そんなことを教えられたたような気がした。
そんなことは、それまで誰も教えてくれなかった。
ここに描かれているのは、受難と復活の物語である。
それだけで充分であろう。
心して観ていただきたい。
なお、この「続・荒野の用心棒」は、マカロニ・ウェスタンを代表する作品として
ニューヨーク近代美術館(MoMA)に永久保存されているという。(T)
続・荒野の用心棒 / バンダイビジュアル
ISBN : B00005LCGU